Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぺいそつ
蒲団・一兵卒
田山 花袋
Lesen Sie 蒲団・一兵卒 (いっぺいそつ) von 田山 花袋 (たやまかたい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.948 Zeichen · 59 Bildschirme
晴れた空には林を越して電信柱が頭だけ見える。
男はてくてくと歩いていく。
田畝を越すと、二間幅の石ころ道、柴垣、樫垣、要垣、その絶え間絶え間にガラス障子、冠木門、ガス燈と順序よく並んでいて、庭の松に霜よけの繩のまだ取られずについているのも見える。一、二丁行くと千駄谷通りで、毎朝、演習の兵隊が駆け足で通っていくのに邂逅する。西洋人の大きな洋館、新築の医者の構えの大きな門、駄菓子を売る古い茅葺の家、ここまで来ると、もう代々木の停留場の高い線路が見えて、新宿あたりで、ポーと電笛の鳴る音でも耳に入ると、男はその大きな体を先へのめらせて、見栄も何もかまわずに、一散に走るのが例だ。
今日もそこに来て耳をてたが、電車の来たような気勢もないので、同じ歩調ですたすたと歩いていったが、高い線路に突き当たって曲がる角で、ふと栗梅の縮緬の羽織をぞろりと着た恰好の好い庇髪の女の後ろ姿を見た。鶯色のリボン、繻珍の鼻緒、おろし立ての白足袋、それを見ると、もうその胸はなんとなくときめいて、そのくせどうのこうのと言うのでもないが、ただ嬉しく、そわそわして、その先へ追い越すのがなんだか惜しいような気がする様子である。