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Japanische Klassiker mit Furigana

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けさともりとお

袈裟と盛遠

芥川 竜之介

Lesen Sie 袈裟と盛遠 (けさともりとお) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 7.566 Zeichen · 16 Bildschirme

Aozora Bunko

己はむしろ、時にはあの女に憎しみさえも感じている。殊に万事が完ってから、泣き伏しているあの女を、無理に抱き起した時などは、袈裟は破廉恥の己よりも、より破廉恥な女に見えた。乱れた髪のかかりと云い、汗ばんだ顔の化粧と云い、一つとしてあの女の心と体との醜さを示していないものはない。もしそれまでの己があの女を愛していたとしたら、その愛はあの日を最後として、永久に消えてしまったのだ。あるいは、もしそれまでの己があの女を愛していなかったとしたら、あの日から己の心には新しい憎みが生じたと云ってもまた差支えない。そうして、ああ、今夜己はその己が愛していない女のために、己が憎んでいない男を殺そうと云うのではないか!

それも完く、誰の罪でもない。己がこの己の口で、公然と云い出した事なのだ。「渡を殺そうではないか。」――己があの女の耳に口をつけて、こう囁いた時の事を考えると、我ながら気が違っていたのかとさえ疑われる。しかし己は、そう囁いた。囁くまいと思いながら、歯を食いしばってまでも囁いた。己にはそれが何故囁きたかったのか、今になって振りかえって見ると、どうしてもよくわからない。