Japanische Klassiker mit Furigana
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きく
親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選
山川 方夫
Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme
……いくらでも、体当りをするがいい。一晩中でも。
私は窓を開けない。
私には、こんりんざい、蛾なんかを部屋に入れてやる気はない。私は、彼女の撒きちらす鱗粉が大きらいなのだ。
夜に向かった窓、その窓の外で、紅い眼を妖しくかがやかせて、彼女は、まだ翅をふるわせつづけている……
だが、ちょっと考えて、彼は手を休めた。
べつに、この部分を女に読ませてやり、その誤解をとく必要はないのだ。
あの女には、もうすっかりうんざりしてきている。おっちょこちょいで、しつっこくて、こわれた蓄音機よろしく、いったん喋りだしたら手がつけられなくなるあの女、顔には皺が目立ちはじめ、下腹によぶんな脂肪がつき、近ごろでは、店でも酔っぱらってはすぐにヒステリイをおこす傾向のつよくなったあの女に、いまさら執着する理由はない。……そうだ、これは絶好のチャンスというやつかもしれない。
「……ねえ、殺さないと約束して」
浴室から、おびえた女の声が聞こえる。
「お願い。廊下の扉を開けておいて。そしたら私、ここからまっすぐ部屋を出て行くから。二度と、あんたに迷惑をかけることはしません。ほんと、ほんとよ。