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Japanische Klassiker mit Furigana

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きく

親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選

山川 方夫

Lesen Sie 親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選 (きく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 67.486 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

ふいに、涙がその目じりからあふれた。頬に光の筋を引いた。

……やがて、彼は立ち上がった。涙の線をのこしたまま、女は眠っていた。彼は、いつもと同じように、その女の顔を、これが最後かもしれぬという気持でしばらくみつめてから、病室のドアを押した。病院の表へ出た。

女の声が、まだ耳に聞えていた。――ねえ、夏って、どんなものだったの? 暑いって、どんなことなの?

突然、彼は足をとめた。夏の街を歩きながら、彼はひとつも暑くないのだ。むしろ、はだ寒ささえ感じられる。

あわてて、彼はあたりを見た。戦慄に似たものが、彼を走りすぎた。いつのまにか、まぶしかった夏の充実した日射しは消え、どこにも夏がないのだ。――彼にも、夏がないのだ。

空は暗く、季節の消えた街を、不気味な冷えた風が動いている。

「暑くなったり、急に寒くなったり、ほんとにへんな陽気ですわね」

「ほんとに。さっきまであんなに照りつけていましたのに。……あら、雨だわ」

中年の女の二人づれが、話しながら足早やに通りすぎる。頭にハンカチをのせ、近くの果物店に駆けこむ。彼は、息を吐いた。

夕立が来ようとしているのだ。