Japanische Klassiker mit Furigana
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おやばかにゅうどうき
親馬鹿入堂記
尾崎 士郎
Lesen Sie 親馬鹿入堂記 (おやばかにゅうどうき) von 尾崎 士郎 (おざきしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.182 Zeichen · 24 Bildschirme
もちろん生態の変化には何の脈絡もなく、どこか間がぬけたところがあるかと思うと、まるで子供とは思われぬような、だしぬけに一変する微妙な神経の動きにドギマギすることがあった。
その俵的が、自家中毒で入院したのは四つの年(昭和二十六年)の十月の末だった。東京から疎開してきたまま伊東に居ついているI小児科の院長は急いで注射したあとで、「六十パーセントまでは大丈夫ですが」といった。一度呼吸がとまったのを、やっと連続的な注射で息を吹きかえしたのである。夜中の入院のために家じゅう大さわぎだった。その晩、俵的と女房だけを病院に残し、私は家へ帰ると台所から冷酒の入った一升罎を持ってきて机の上におき、コップで、ぐいぐいと呷った。おそらく俵的の生命が持ちこたえられるかどうかということは、こん夜ひと晩を境いにしてきまるであろう。私は四年間、あの小さい生命だけをたよりに生きてきた。俵的のいない人生なぞは考えてみたこともない。私の部屋にはN氏が俵士の出生祝いに持ってきてくれた中江兆民の書がかかっている。
「文章経国大業 不朽盛事」
という文字がその晩にかぎって何となく空々しく、遠いところへ外れてゆくように思われる。