Japanische Klassiker mit Furigana
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かいのあなにかっぱのいること
貝の穴に河童の居る事
泉 鏡花
Lesen Sie 貝の穴に河童の居る事 (かいのあなにかっぱのいること) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.260 Zeichen · 32 Bildschirme
雨を含んだ風がさっと吹いて、磯の香が満ちている――今日は二時頃から、ずッぷりと、一降り降ったあとだから、この雲の累った空合では、季節で蒸暑かりそうな処を、身に沁みるほどに薄寒い。……
木の葉をこぼれる雫も冷い。……糠雨がまだ降っていようも知れぬ。時々ぽつりと来るのは――樹立は暗いほどだけれど、その雫ばかりではなさそうで、鎮守の明神の石段は、わくら葉の散ったのが、一つ一つ皆蟹になりそうに見えるまで、濡々と森の梢を潜って、直線に高い。その途中、処々夏草の茂りに蔽われたのに、雲の影が映って暗い。
縦横に道は通ったが、段の下は、まだ苗代にならない水溜りの田と、荒れた畠だから――農屋漁宿、なお言えば商家の町も遠くはないが、ざわめく風の間には、海の音もおどろに寂しく響いている。よく言う事だが、四辺が渺として、底冷い靄に包まれて、人影も見えず、これなりに、やがて、逢魔が時になろうとする。
町屋の屋根に隠れつつ、巽に展けて海がある。その反対の、山裾の窪に当る、石段の左の端に、べたりと附着いて、溝鼠が這上ったように、ぼろを膚に、笠も被らず、一本杖の細いのに、しがみつくように縋った。