Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.416 Zeichen · 53 Bildschirme
結婚などはもっとさきのことだ、と思っていた。
「小さいじぶんから見馴れていたので、却って眼が鈍っていたんだな」彼は夜具の中でそう呟いた、「――もしそこに気がついていたら、長崎へゆくまえに結婚していたろうし、事情はすっかり変っていたに違いない」
おくてで暢びりしていて、まだ恋ごころなどはまったくあるまい、と思っていたために、裏切られた痛手も大きかったのだ。
「おれは自分のことだけにとらわれていたようだ」やがてまた彼は呟いた、「おれをここへ入れたのは、父が天野さんに籠絡されたのだと思った、父は昔から天野さんには頭があがらなかったし、おれの将来についても天野さんに頼りきっていたからな、――おれはちぐさを憎み、父を、天野さんを憎み、おまけにこの養生所まで憎んだ」
登は顔をしかめながら、枕の上で頭を左右に振った。
「ちぐさは自分のしたあやまちで傷ついた、天野さんも、父も、それぞれの意味で傷ついた、そのなかで、おれ一人だけ思いあがり、自分だけが痛手を蒙ったと信じていた、いい気なものだ」彼はもっと顔をしかめた。
「いい気なものだ、――ここへ来てからのことを考えてみろ、おい、恥ずかしくはないか」