Japanische Klassiker mit Furigana
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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Lesen Sie 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.416 Zeichen · 53 Bildschirme
――あれを見れば養生所の先生だということがすぐにわかります、私どものような貧乏人は、養生所へはいきたがらないものですが、通りかかった先生を見れば、治療に寄っていただきたい人間がたくさんいます、私なんぞはなにより有難い上衣だと思いますがな。
その上衣はべつの意味をもっていた。動作に便利なのと、清潔さを保つこと、患者の汚物でよごれたりすれば、すぐに取換えられることなどで、仮によごれなくとも、夏は毎日、冬は隔日に着替えるきまりになっている。去定はそういう点でもちい始めたのであろうが、佐八の言葉を聞いて、そこにも意味のあることを、登はひそかに承認したのだ。
「いい気なもんだ」
お雪と別れて自分の部屋へ帰りながら、彼は自分を嘲るように首を振った。
「人間本来のもっとも強い正当な欲望か」と云って彼は唇を歪めた、「――おまけにこの、立派な上衣を着ていながらさ」
去定の部屋の前まで来たとき、障子の向うで呻くような去定の声が聞えた。呻くというより咆えるというほうに近く、短い一と声だったが、登はふいに水でも浴びせられたように感じ、いそいでそこを通りすぎた。そして廊下を曲ると、森半太夫が自分の部屋の障子をあけ、はいれという手まねをした。