Japanische Klassiker mit Furigana
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のわき
野分
Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme
「ここに百円ある。あとはまた送る。これだけあったら当分はいいだろう」
「そんなにいるものか」
「なにこれだけ持って行くがいい。実はこれは妻の発議だよ。妻の好意だと思って持って行ってくれたまえ」
「それじゃ、百円だけ持って行くか」
「持って行くがいいとも。せっかく包んで来たんだから」
「じゃ、置いて行ってくれたまえ」
「そこでと、じゃ明日立つね。場所か? 場所はどこでもいいさ。君の気の向いた所がよかろう。向へ着いてからちょっと手紙を出してくれればいいよ。――護送するほどの大病人でもないから僕は停車場へも行かないよ。――ほかに用はなかったかな。――なに少し急ぐんだ。実は今日は妻を連れて親類へ行く約束があるんで、待ってるから、僕は失敬しなくっちゃならない」
「そうか、もう帰るか。それじゃ奥さんによろしく」
中野君は欣然として帰って行く。高柳君は立って、着物を着換えた。
百円の金は聞いた事がある。が見たのはこれが始めてである。使うのはもちろんの事始めてである。かねてから自分を代表するほどの作物を何か書いて見たいと思うていた。生活難の合間合間に一頁二頁と筆を執った事はあるが、興が催すと、すぐやめねばならぬほど、饑は寒は容赦なくわれを追うてくる。