Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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のわき

野分

夏目 漱石

Lesen Sie 野分 (のわき) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.508 Zeichen · 189 Bildschirme

Aozora Bunko

この容子では当分仕事らしい仕事は出来そうもない。ただ地理学教授法を訳して露命を繋いでいるようでは馬車馬が秣を食って終日馳けあるくと変りはなさそうだ。おれにはおれがある。このおれを出さないでぶらぶらと死んでしまうのはもったいない。のみならず親の手前世間の手前面目ない。人から土偶のようにうとまれるのも、このおれを出す機会がなくて、鈍根にさえ立派に出来る翻訳の下働きなどで日を暮らしているからである。どうしても無念だ。石に噛みついてもと思う矢先に道也の演説を聞いて床についた。医者は大胆にも結核の初期だと云う。いよいよ結核なら、とても助からない。命のあるうちにとまた旧稿に向って見たが、綯る縄は遅く、逃げる泥棒は早い。何一つ見やげも置かないで、消えて行くかと思うと、熱さえ余計に出る。これ一つ纏めれば死んでも言訳は立つ。立つ言訳を作るには手当もしなければならん。今の百円は他日の万金よりも貴い。

百円を懐にして室のなかを二度三度廻る。気分も爽かに胸も涼しい。たちまち思い切ったように帽を取って師走の市に飛び出した。黄昏の神楽坂を上ると、もう五時に近い。気の早い店では、はや瓦斯を点じている。