Japanische Klassiker mit Furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme
とお政は早や声をくもらして、四苦八苦に気もみする。夫にすこし客の相手をしていてくれと頼めば源四郎は「ウンウン」と返事はしても、立ちそうにもせぬ。お政は泣く子をかげでしかりつけ、背におうて膳立てをするのである。おちついてやるならばなんでもないことながら、心中惑乱しているお政の手には、ことがすこしも運ばない。
老人はなぜ寝てしまったか、源四郎はどう思ってるのか。使いの人らは帰るにも帰れず、ぼんやりたばこを吸うている。老人のせきする声と源四郎がときどきへっついに燃やす火の音のほか、声立てる人もない。かくていまこの一家は陰悪な空気にとざされているのである。
お政は長いあいだ苦に思っていた狂母が、きょう人なみに終わったと聞いて、一どは胸なでおろして安心したものの、さすがに忘れがたき母の死を感じては、心さびしくもあり悲しくもある。二十年あまりのあいだじゃまにされ、やっかいにされ、あらゆる醜状を世間にさらした生きがいなき不幸な母と思いつめると、ありし世の狂母の惨状やわが身の過去の悲痛やが、いちいち記憶から呼び起こされるのである。
手に用をせねばならぬお政は、わきたぎつ涙をぬぐうてもいられぬ。