Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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つげびと

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme

Aozora Bunko

「ありません」

花前は、よどみなく決然と答えて平気でいる。話のしりを結ばないことになれてる主人も、ただありませんと聞いたばかりではこまった。なみのものであれば、すぐにそれでおまえどうする気かと問いかえすにきまってるけれど、変人をみとめている花前にそういってもしかたがないから、

「うん、そうか」

といったまま、しばらく黙している。細君はじれ気味に、

「おまえずいぶん長いあいだ東京にいるというに、懇意の人もないのかね」

花前はちょっと目を細君にむけたが、くちびるは動かない。これは細君の問いがおかしいのだ。変人でとおった人間に懇意な人があるかでもあるまい。主人はしかたがなく、

「まあえいや、そんなことあとの話にしよう、えいや花前」

「保証人がなくていけなければ帰ります」

「いや、帰られてはこまる、えいから花前やってくれや、じゃこうしよう、おれが保証人になることにしよう、だからやってくれや」

細君は、目をぱちつかせて主人の顔を見る。

主人は目で細君を制す。勝手で子どもが泣きたったので細君は去った。花前もつづいて立ちかけたのをふたたび座になおって、

「この国で生まれた人間ですから、つまりはこの国のやっかいになってもしかたありません」