Japanische Klassiker mit Furigana
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つげびと
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (つげびと) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 34.955 Zeichen · 71 Bildschirme
この象牙のはしにはだれもおどろいてる。ややたいらめな質のもっとも優等な象牙で、金蒔絵がしてある。細君などは見たこともないものだといっている。下女の話によると、下女が花前さんのおはしはじつにりっぱなものですねえ、なにかいわくのありそうなはしじゃありませんかというと、しろりと笑うそうだ。
下女は花前さんを笑わせるにゃ、はしをほめるにかぎるといって笑っている。
しかし細君や子どもたちは、変人とはいえ、花前がいかにもきちんとした顔をしているので、いたずら半分にはしのことを問うてみるようなことは得しない。細君はどういうものか、いまだに花前を気味わるくばかり思って、かわいそうという心持ちになれぬらしい。
主人は以上の話を総合してみて、残酷な悲惨な印象を自分の脳裏に禁じえない。精神病者に相違ないけれど、花前が人間ちゅうの廃物でないことは、畜牛いっさいのことを弁じて、ほとんどさしつかえなきのみならず、ある点には、なみの人のおよばぬことをしている。いつかのように、この国で生まれた人間ですからというような調子に、人世上のことになんらか考えてやしまいか。人世問題になんらかの考えがあって、いまの境遇にありとせば、いよいよ悲惨な運命である。