Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
「こんな物を見ているところをもしも人にでも見られたら。」と気がつくと急にはじかれるような気持ちになって近くを見まわした。無性に気がとがめて、人目が気になった。あたりに人の見えないのに安心して、しきしまに火をつけながらまた松の根に腰をおろした。ないようにしても、どうかすると風が梢にさわって、ばらばらと木の葉が落ちる。
自分はたばこを吸うても、何本吸うたか覚えのないほど追懐にとらわれてしまった。
自分はその時十七であった。お菊は十五であった。背は並より高いほう、目の大きい眉のこい三角形の顔であった。白いうなじが透きとおるようにきれいで、それが自分にはただかわいかった。正月五ヵ日の間毎日のようにお菊の家の隣の新兵衛の家に遊びに行った。お菊はよく新兵衛の家に遊びに来た。女の影をちらと見たばかりでも、血がわきかえるほど気がはずんだ。声を聞いたばかりでもいきいきした思いに満たされた。たまにはうまく出合ってことばをかわすことができれば、あまい気持ちに酔うのであった。女も自分がとかく接近するのを避けもせず、自分が毎日隣に来るのをそれと気づいてるらしいが、それをいやに思うようなふうでなかった。