Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
我にもあらず、そんな考えばかり浮かんでしかたがない。
自分で気を引き立てようと思いついて見てもだめだ。歌集を出して見る、一向におもしろくない。小説を出して見る、やはり興味がない。はては腹が立ってきて、妙に気があせって、
「なんだばかばかしい。」
こう口のうちで我を叱りながら、荒々しく、ガラス窓をおして外を眺めて見たが、薄黒く曇った空の下にどれもどれも同じように雑木の繁った山ばかり、これもなんとなく悲しく見えてしまった。
飯田町へ着いたらすぐ大木のところへ行って見ようと、矢野はただ船に疲れた人が陸を恋しがるような思いで大木が恋しくなった。飯田町へ降りては電車に乗るのもいやで、一時も早くというような心持ちに人車を命じて、大木の家まで走りついた。
今先輩大木の家に落ちついて、ゆったりとした大木の風彩に接し、情のこもった大木の話を聞けば、矢野は何時の間か、時雨の空が晴れたような心地にまったく苦悶がなくなる。きょうも、大いに大木にうったえて相談するつもりでやって来たのだが、話してるうちにうったえる必要もなくなり、相談しようと思ったのもなんであったかを忘れてしまった。