Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
矢野はいよいよとなればすべての希望をなげうつことができるように思うけれど、ただ一つ悲しいことがある。容易に自分を零にできないことがある。それがためにわが運命の解決にまようほどの事なのだ。これはまだ大木に白状しない胸中の秘密で、いうまでもなくそれは恋だ。
矢野は手紙でしばしば大木にあかそうとしたけれど、あかす機会もなかった。今夜は口の先まで出かけたけれど、話のできない矢野はついに話す機会を失ってしまった。またこの事だけは大木に話しても、自分勝手に求めた苦悶でみだりに先輩たる人に語るべき事でないような気もする。これを軽々しく話すは自分の人格を傷つけるような気もする。病人のくせに恋もないもんだと思われるような恥ずかしい気もする。
自分からじゅうぶん胸を開いてしまわないのだから、今日ばかりは大木の慰藉によって、ことごとく胸の曇りをなくしたというわけにはゆかない。けれどそれでも帰りにはいつものごとく、心じょうぶに愉快になって、それほど失望するにも及ばないような心地で帰られた。
矢野は上京以来とにかく心にひまがなかった。今は登校の準備もととのい、しばらくぶりで、大木の話も聞き、幾分心にくつろぎができたところから、にわかにみ篶子の事を思うようになったのである。