Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おちぼ

野菊の墓

伊藤 左千夫

Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme

Aozora Bunko

捕えようと望んでいる物がどうにか、捕え得らるるような気分になった。

東京の学生生活にも、いちじるしく趣味を感じてきた。下宿屋の状態から、諸商人のようす表通りの商店の風などにも、目がとまり、自分の周囲がすべて明るくなって、ようやく身外の事物に目をそそぐ余裕ができてきた。ここへ始めて来た時の、三日おっても毎日来る下女の顔を知らなかったのに比べると、人が違ったごとく思われる。このごろ矢野は自然に元気が出て、よく中島や木島が室へ話にゆく。隣室の法学生ともいく度か話をした。とにかく人の話をおもしろく聞かれるようになった。給仕の下女に愛想の一言もいうようになった。同級生に知り合いができて訪ねてくる。国から手紙がくる、友人から手紙がくる。母と妹とからくる手紙はいつでも長い。み篶子も絵はがきを送ってきた。心の匂いは少しも現われてはいないけれど、らちもなく嬉しい。み篶子がただういういしく少しもあだめいたふうがなく、無心に咲いてる花のようなおもむきが、矢野には嬉しくてならないのである。それで、自分からも毛の先ほども、いやらしい事はいうてやらない。みなぎるような心の思いを、じっとこらえていわないところに矢野はひとり深き興味を感じている。