Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
矢野は気味悪く一番あとになって室へはいった。
消毒衣を着た学生四五人ずつ、二組に別れておのおの今解剖したあとを注視して話をしている。ひとりの学生はなお剖いて見る気か、しきりに刀を研いでる。死体は二つであった。
一つは三十ぐらいの男で、「頭に手をつくべからず。」と札が下げてあった。頭ばかり手をつけずに、全部分解がすんだあとであった。一つは女で今頭を分解したところで、頭をメチャメチャに切り剖けられては男も女もない。矢野にはまだなにがなにやら一向わからぬ。臭いの汚ないのというところは通り越している。すべての光景が文学的頭の矢野には、その刺激にたえられない思いがする、寒気がする。
なれてくると、刀で間に合わなく指で臭肉を引き裂いたり、そうしてその手をちこちこ洗って、そこで平気で弁当もやるそうだが、しかしいくら医者でも始まりはずいぶんいやなものだそうだ。矢野は人一倍閉口したのである。
矢野はつくづくそう思った。人間の生命をあずかるという天職から、こういうことをするならば、医師はじつに尊い職業であるが、自己の生活的職業のためにこんな事をするのは考え物だと思った。