Japanische Klassiker mit Furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lesen Sie 野菊の墓 (おちぼ) von 伊藤 左千夫 (いとうさちお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 25.621 Zeichen · 52 Bildschirme
胸が躍り手先がふるえる。目を視張ってきた。
「僕ももとより安心したいですが、どうせば安心ができます。」
大木はようやく矢野の顔を注視した。
「もとより安心したいですが、そんな生やさしい事で安心が得られると思うか。安心するかしないかは生きるか死ぬかの問題だ。自己の存在を忘れるほどに精神の活動があって始めて安心ができるのだ。眠った安心は役に立たない。人間がいかにはかないものかということを強く強く考えて見たまえ。悠久なる天地の間にいかに自己が小なものかということを強く強く考えて見たまえ。卑俗な欲望にあせって自我に執着するのが馬鹿らしくなってくるよ。君は批評的な話と思うかも知れないが、僕にはそれ以上にわからぬ。あとは君の考えに任せる。
やあたいへんな説教をやったね。茶が冷えてしまう菓子でもやりたまえ。」
矢野は沈思しばらくして、
「病気を忘れればえいですな。」
「そうです。人間は自己を忘れたところに真生命があるのだ。君にしてはその病を忘れたところに君の生命があるのだ。いわんや君は文学という君の天地を持ってるではないか。」
「わかりました。」
十二月押しつまってから矢野の手紙が大木の机に載っていた、いつも長い手紙ときまってるにその手紙はすこぶる簡単であった。