Japanische Klassiker mit Furigana
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かのように
阿部一族・舞姫
Lesen Sie 阿部一族・舞姫 (かのように) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.875 Zeichen · 141 Bildschirme
石田は婆あさんを置きたいという注文をした。時という五十ばかりの婆あさんが来た。夫婦で小学校の教員の弁当をこしらえているもので、その婆あさんの方が来てくれたのだそうだ。不思議に饒舌らない。黙って台所をしてくれる。
二三日立った。毎日雨は降ったり歇んだりしている。石田は雨覆をはおって馬で司令部に出る。東京から新に傭って来た別当の虎吉が、始て伴をするとき、こう云った。
「旦那。馬の合羽がありませんがなあ。」
「有る。」
「ええ。それは鞍だけにかぶせる小さい奴ならあります。旦那の膝に掛けるのがありません。」
「そんなものはいらない。」
「それでもお膝が濡れます。どこの旦那も持っています。」
「膝なんざあ濡れても好い。馬装に膝掛なんというものはない。外の人は持っておっても、己はいらない。」
「へへへへ。それでは野木さんのお流儀で。」
「己がいらないのだ。野木閣下の事はどうか知らん。」
「へえ。」
その後は別当も敢て言わない。
石田は司令部から引掛に、師団長はじめ上官の家に名刺を出す。その頃は都督がおられたので、それへも名刺を出す。中には面会せられる方もある。内へ帰ってみると、部下のものが名刺を置きに来るので、いつでも二三枚ずつはある。