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Japanische Klassiker mit Furigana

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きりのばんしゃ

霧の蕃社

中村 地平

Lesen Sie 霧の蕃社 (きりのばんしゃ) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.389 Zeichen · 57 Bildschirme

Aozora Bunko

そういう彼女の姿は邪気がないだけに、かえっていっそう哀れぶかいとも見えたが、しかしその心の移ろい方のはげしさは、さすがに同じい蕃人の兄の眼にさえ、浅ましいものに映るのであった。

「ああ、これが一度は大人の奥さんとまで言われたことのある妹か」

半ばの不憫さと、半ばの嫌厭と、複雑な感情でルーダオは妹の姿を眺め、暗澹としたため息をもらすのである。そして、そのあとでは、ふっと、内地人に対して耐えられない憤りの念が湧いてくる。

「妹が蕃人であるという、ただそれだけの理由で近藤は妹を捨てたのだ」

その上、妹の最初の結婚に就ては、ルーダオには特殊な、頭目としての責任が残っている。社の風習や、社人の暗黙の反対やを無視して、彼は妹を他種族にとつがせた。その妹がつまりは内地人にすてられ、結婚に失敗して山に戻ってきている。頭目として社の習俗に対して申しわけないと考えるのである。

テワスが再度の結婚を嬉々として楽しんでいるのに引きかえ、思慮ぶかい兄の心は常に鬱屈していた。自分たちに与えられた内地人の侮蔑に対して、言いようのない憤りを感ずるのである。この反感は実に永い間、彼の胸底にくすぶりつづけていた。