Japanische Klassiker mit Furigana
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きりのばんしゃ
霧の蕃社
中村 地平
Lesen Sie 霧の蕃社 (きりのばんしゃ) von 中村 地平 (なかむらちへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.389 Zeichen · 57 Bildschirme
建築の直接責任者である分署主任の警部佐塚愛祐はそのように命じた。しかし、そのことは予期しない、無惨な結果を産んだ。蕃人たちの肩は馴れない方法のために、いちように赤く腫れあがって痛んだのである。
佐塚警部の妻もまた蕃人出身であった。だから始め彼が分署主任としてその土地に赴任した時、蕃人たちはその来任を心から喜んだ。自分たちの生活に理解が深いにちがいない、という期待のためにである。しかし、警部が予期しない失政をほどこした時、蕃人たちの心は彼から離れた。初めの期待が大きかっただけに、失望の度合いは少くなかったのである。
賦役とはいうものの、労役に対しては当然の報酬として日当四十銭ずつが支給される約束であった。それは蕃人の生活程度から推せば、決して少い額ではない。しかし、蕃人の心が始めからこの賦役に穏やかでないことを知っている二三の不逞な本島人たちは、たちまちそれを煽情の具に供した。
「そんな、四十銭だなんて、馬鹿な、安い賃金があるもんか」
この煽動が素朴な蕃人たちの不平をいっそう助長させる結果を産んだ。
用材をきりだす山林から、現場までは約半里ばかりある。