Japanische Klassiker mit Furigana
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せいねん
青年
Lesen Sie 青年 (せいねん) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.670 Zeichen · 246 Bildschirme
借りて帰っているラシイヌの一巻が、今は自分を向うに結び附けている一筋の糸である。あれを返すとき、向うは糸を切るであろうか。それともその一筋を二筋にも三筋にもしはすまいか。手紙をよこしはすまいか。この内へ尋ねて来はすまいか。
こう思うと、なんだかその手紙が待たれるような気がする。その人が待たれるような気がする。あのお雪さんは度々この部屋へ来た。いくら親しくしても、気が置かれて、帰ったあとでほっと息を衝く。あの奥さんは始めて顔を見た時から気が置けない。この部屋へでもずっと這入って来て、どんなにか自然らしく振舞うだろう。何を話そうかと気苦労をするような事はあるまい。話なんぞはしなくても分かっているというような風をするだろう。
純一はここまで考えて、空想の次第に放縦になって来るのに心附いた。そして自分を腑甲斐なく思った。
自分は男子ではないか。経験のない為めに、これまでは受身になっていたにしても、何もいつまでも受身になっている筈がない。向うがどう思ったって、それにどう応ずるかはこっちに在る。もう向うの自由になっていないと、こっちが決心さえすればそれまでである。