Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
と軽い怒りを含んだ声で呼びかけると、やがて割烹衣の裾で手を拭きながらその部屋に入って来たのは五十ばかりのとめという通い婆。小さな髷の載った毛の薄い頭をペコペコと下げ、
「はい、どうも申訳ありません。扱い馴れぬのでつい忘れて了って。これからはきっと気をつけますからご勘弁なすって下さい」
といって煖炉棚の上の置時計を覗き込み、
「安南王といえば、旦那様のお出でが遅うございますこと。もう十二時十五分前でございますよ。まさかお忘れになったのでは」
美人はこれも怨めしそうに時計の方へ振り返り、
「本当に遅いわねえ、どうしたのかしら。でも昨日あんなに固い約束をしたのだから忘れるなんてことはないと思うけど。でもひょっとしたらまた銀座でも飲み廻っているのかも知れないわ。ほんとに憎らしいことねえ。ひとの気も知らないでさ。遅れて来でもしたら本当にどうしてやろうか知ら」
とめは手で煽ぎたてるようにして、
「ええ/\、思いきり喰いついておやんなさいまし。こんな美しいひとに気を揉ませるなんて、いくら旦那様でもあんまり罪が深うございますよ」
美人はふッと我れに返ったように急に言葉忙しく問いかけ、