Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖 (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.957 Zeichen · 114 Bildschirme

Aozora Bunko

「あ、そこは、納屋番が夜寝る所じゃ、その廊下の奥がよい」

「どこも同じじゃございませんか。ほんとにひどい旅籠だこと……。ああ、この天井板のない屋根裏を見ていると、大阪表から来た時の、怖かッた船底が思いだされます」

「ばかな」

かれも、それをいわれることは、古傷にさわられるような気持がすると見えて、舌打ちをしながら、お米の側へ来て坐った。するとお米は、「あら……」と、後ろへ手をついて、

「血が……あなたの袖に、ま、耳のところへも、なまなましい血が……」と目をみはった。

いわれた所を撫で廻して、掌についた色を眺めながら、

「なんでもない」

「どうなすったのでございます」

「甲比丹の三次の血だよ、わしの身から流れた血ではない」

「え? ……あの三次を、殺したのでございますか」

「竹屋三位が矢をもって射殺したのだ。あの居候殿は、人を殺すのが好きで困る」と、かれは血におびえた心のうちで、三次の手下どもが、火薬一件や自分とお米のいきさつなどを、世間に流布せねばよいがと案じていた。

お米もまた、啓之助の頬へ、ベトリとつぶれた血糊のかたまりを見て、にわかに、胸がムカムカとしてきた。