Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

たそがれ

黄昏

宮本 百合子

Lesen Sie 黄昏 (たそがれ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.500 Zeichen · 29 Bildschirme

Aozora Bunko

四

その夜、おくめは、明方までまんじりともしないで床の上に眼を醒していた。

奥の部屋はひっそりと寝鎮り、電燈を低く下した彼女の小室ばかりに、厳しい冬の夜気がしんしんと迫って来る。

深く顎まで夜着に埋り、小さい木枕に頭を横えて思いに耽っていると、おくめは、自分が今どこにいるかさえも忘れるようになった。

「沢屋、沢屋、沢屋にあれ等の父親がいるのだ」ちらりと一言耳に挾んだだけで、彼女は、この、恐らくあまり大きくない旅館の表構えの様子まで、まざまざと目に浮んで来るような心持がした。

「何をしに東京へ出て来たのだろう――」

彼女と一緒にいた時分から、彼が東京へ来るのは珍しいことではなかった。昔気質の、律気一遍な祖父の目を盗むようにしては、口実を拵えて東京に来る。そして、何をしているのか、商売の向(むき)は一日二日で済んでも、迎えの手紙が行きそうになるまでは、決して戻って来ようとはしない。――

東京といえば定って、朝二番の上りで出掛けて行った良人の姿がおくめの心に髣髴(ほうふつ)として甦って来た。近所などでは滅多に見かけない粋(いき)な服装をし、折鞄などを小脇に抱えた後姿を、彼女は、幾度、嫉妬と愛誇(あいこ)とを混ぜ合わせた心持で見送ったことであろう。