Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
もし貴女が鐘鳴器室で見た人物の名が云えるのでしたら」
「すると、それは……誰のことなんでしょうか」と伸子は素知らぬ気な顔で、鸚鵡返しに問い返した。しかし、その後の様子は、不審怪訝なぞというよりも、何か潜在している――恐怖めいた意識に唆られているようだった。けれども、気早な熊城はもはや凝っとしてはいられなくなったと見えて、さっそく彼女が朦朧状態中に認めた、自署の件(グッテンベルガー事件に先例のある潜在意識的署名)を持ち出した。そして、それを手短に語り終えると開き直って、厳しく伸子の開口を迫るのだった。
「いいですかな。僕等が訊きたいのは、僅ったそれだけです。どんなに貴女を、犯人に決定したくなくも、つまるところは、結論が逆転しない限りやむを得ません。つまり、要点はその二つだけで、それ以外の多くを訊ねる必要はないのです。これこそ、貴女にとれば一生浮沈の瀬戸際でしょう。重大な警告と云う意味を忘れんように……」と沈痛な顔で、まず熊城が急迫気味に駄目を押すと、その後を引き取って、検事が諭すような声で云った。
「勿論ああいう場合には、どんなに先天的な虚妄者でも、除外する訳にはゆきません。