Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
その指差している手の形をした血の溜りが、あろうことか指頭の方向を、右方の壇上――すなわち伸子の位置に向けていたからである。のみならず、あるいは気のせいかは知らないけれども、なんとなくその形が、竪琴にも似ているように思われるのだった。一同は云いしれぬ恐ろしい力を感じて、しばらくその符号に釘づけされてしまった。やがて、伸子は竪琴に顔を隠して、肩を顫わせ激しい息使いを始めたが、法水は、それなり訊問を打ち切ってしまった。三人が出て行ってしまうと、熊城は熱のあるような眼を法水に向けて、
「やれやれ、此奴もまた結構な仏様だ。どうだい、この膳立ての念入りさ加減は」とファウスト博士の魔法のような彫刀の跡に、思わず惑乱気味な嘆息を洩らすのだった。検事はたまらなくなったような息付きをして、法水に云った。
「すると、結局君は、この暗合を、この人を見よ――と解釈するのかね」
「いやどうして、それは自然のままにして、しかも流動体なり――さ」と法水はあっけなく云い放って、その突然の変説が検事を驚かせてしまった。「無論そうなると、あの三人は、完全に僕の指人形になってしまうのだよ。いまに見給え、あの三匹の深海魚は、きっと自分の胃腑を、僕の前へ吐き出しにくるに相違ないのだから」