Japanische Klassiker mit Furigana
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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 黒死館殺人事件 (こくしかんさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 296.741 Zeichen · 584 Bildschirme
そうして、一同が出て行ってしまうと、熊城は難色を現わして、法水に毒づいた。
「いやどうも呆れたことだ、むしろ与えられたものを素直に取る方が、君に適わしい高尚な精神だと思うんだがね。それより法水君、今の証言で、君が先刻云った武具室の方程式を憶い出してもらいたいんだ。あの時君は、2-1=クリヴォフだと云ったね。しかし、その解答のクリヴォフが殺されたとしたら……」
「冗談じゃない。あんな賤民の娘が、どうして、この宮廷陰謀の立役者なもんか」と法水は力を罩めて云い返した。
「なるほど、伸子という女はすこぶる奇妙な存在で、ダンネベルグ事件と鐘鳴器室を除いた以外は、完全に情況証拠の網の中にあるのだ。しかし、あの標本的な人身御供があるがために、ファウスト博士は陽気な御機嫌を続けていられるんだぜ。第一伸子には、動機も衝動もない。例えばどんな作虐性犯罪者でさえも、そういった病的心理を、引き出すに至る動因が、必ずあるものなんだよ。現に、いまもあの好楽の海豚どもが……」
と法水が何事かに触れようとした時、先刻調査を命じておいた拇指痕の報告がもたらされた。しかし、結果は徒労に終って、それに該当するものは、ついに現われ出て来なかった。