Clásicos japoneses con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lee 伸子 (のぶこ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 232.543 caracteres · 466 pantallas
老人は、独り八畳の方で新聞を読んでいた。その方へ行かず、彼は、
「ただ今」
と云いながら、伸子の後に立った。
「おそかったわね、郵便局?」
「――いつものことだのに、若い者が計算をぐずぐずしているから」
「電話だけじゃなかったの?……」
伸子は振り向いて夫を見た。彼の顔が、何かぼんやり、感情を現しているように見えた。
「どうして?――只今をしていらっしゃいな」
佃はぐるり、ぐるり、自分の首の方を廻して襟巻をぬぎ、
「――会社に電話をかけて来ました」
と云った。伸子の父の会社という意味であった。
「何か御用だったの?」
「――金曜日の夕方から親父と一緒に上りますが、御都合はどうか、伺って見たんです」
伸子は不意打ちを喰ったような変な顔をした。
「そしたら?」
「多分いいとは思うが、確かな返事は明日するから、また電話をかけて見てくれろとおっしゃった」
「――――」
父の性質で、そうしか返事できなかったのが、伸子に察せられた。
それにしても、なぜ電話をかける前に、ひとこと相談してくれなかっただろう。家を持って初めて滞在に来た老父に、去年の秋以来の、佐々との不快ないきさつを知らせたくない佃の心持は、伸子によくわかった。