Clásicos japoneses con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lee 伸子 (のぶこ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 232.543 caracteres · 466 pantallas
随分ぼろ家であった。でも、狭い空地には楓や薔薇が生えていて、どこやら落着いた趣もあったので、借りることにきめた。引越しの手伝い、大工など急に入用になった。夜、
「どうしましょうね」
伸子が夫に相談した。
「トラックいるでしょう?」
「さあ――ただ馴染のないところへ行っても、たかくとるばっかりだろうし――動坂に出入りの、あるでしょう」
「そりゃあるわ」
「一つ、それをきいて見ていただいたらどうだろう、電話で」
「今夜?」
「早い方がいいでしょう」
佃は近所の自働電話まで、伸子を連れて行った。佃は電話箱の外に待っていた。伸子が、
「ああ、母様? 今日、急にいい家が見つかったの」
そんな調子で、運送屋その他のことを頼んだ。動坂では、とにかく伸子の頼みを皆承知してくれた。彼女が電話を切って出ると、佃が、
「どうでした」
と云いながらよって来た。
「いいって」
佃は満足そうに、
「――君がかけた方がいい、だから……」
と云った。
そのことを、云うのであった。が、伸子には、自分があの時「いいって」と答えた、満足の心持をはっきり思い出せるので、悪いのは佃だけと思えなかった。伸子がしゃんとしていたら、動坂へなんぞ頼むのはやめましょう、と云っただろう。