Clásicos japoneses con furigana
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みちくさ
道草
Lee 道草 (みちくさ) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 145.812 caracteres · 293 pantallas
ああして大人しく帰って置いて」
「来ても構わないさ」
「でも厭ですわ、蒼蠅くって」
健三は細君が次の間で先刻の会話を残らず聴いていたものと察した。
「御前聴いてたんだろう、悉皆」
細君は夫の言葉を肯定しない代りに否定もしなかった。
「じゃそれで好いじゃないか」
健三はこういったなりまた立って書斎へ行こうとした。彼は独断家であった。これ以上細君に説明する必要は始めからないものと信じていた。細君もそうした点において夫の権利を認める女であった。けれども表向夫の権利を認めるだけに、腹の中には何時も不平があった。事々について出て来る権柄ずくな夫の態度は、彼女に取って決して心持の好いものではなかった。何故もう少し打ち解けてくれないのかという気が、絶えず彼女の胸の奥に働らいた。そのくせ夫を打ち解けさせる天分も技倆も自分に充分具えていないという事実には全く無頓着であった。
「あなた島田と交際っても好いと受合っていらしったようですね」
「ああ」
健三はそれがどうしたといった風の顔付をした。細君は何時でも此所まで来て黙ってしまうのを例にしていた。彼女の性質として、夫がこういう態度に出ると、急に厭気がさして、それから先一歩も前へ出る気になれないのである。