Clásicos japoneses con furigana
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みちくさ
道草
Lee 道草 (みちくさ) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 145.812 caracteres · 293 pantallas
健三の父は中気で死んだ。その父のまだ達者でいるずっと前から、彼はもう東京にいなかった。彼は親の死目にさえ会わなかった。こんな書付が自分の眼に触れないで、長い間兄の手元に保管されていたのも、別段の不思議ではなかった。
彼は漸やく書類の結目を解いて一所に重なっているものを、一々ほごし始めた。手続き書と書いたものや、取り替せ一札の事と書いたものや、明治二十一年子一月約定金請取の証と書いた半紙二つ折の帳面やらが順々にあらわれて来た。その帳面のしまいには、右本日受取右月賦金は皆済相成候事と島田の手蹟で書いて黒い判がべたりと捺してあった。
「おやじは月々三円か四円ずつ取られたんだな」
「あの人にですか」
細君はその帳面を逆さまに覗き込んでいた。
「〆ていくらになるかしら。しかしこの外にまだ一時に遣ったものがあるはずだ。おやじの事だから、きっとその受取を取って置いたに違ない。どこかにあるだろう」
書付はそれからそれへと続々出て来た。けれども、健三の眼にはどれもこれもごちゃごちゃして容易に解らなかった。彼はやがて四つ折にして一纏めに重ねた厚みのあるものを取り上げて中を開いた。