Clásicos japoneses con furigana
ja-reading.com
Lee clásicos japoneses en línea con furigana. Filtra por nivel JLPT, toca una palabra para ver el significado y traduce una frase.
ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lee 五瓣の椿 (ごべんのつばき) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 149.721 caracteres · 296 pantallas
得石のよく手入れのしてある口髭が片方へひきつった。だがそれは怒りのためではなく、ぬかるみへ坐りこむ酔漢の、居直るような表情に似ていた。
「そういう金できさまも雨露を凌いできたんだ」と彼は歯と歯のあいだから云った、「喰べる物を喰べ着る物を着、雨風にも曝されずに生きて来られたのはそのおかげだぞ」
「それを有難がれとでも云うのかい」おくには鼻で笑った、「ふん、そんなきたならしいお金で生きるくらいなら、あたしゃ飢え死をするほうがよっぽどましだよ」
「そうしたらどうだ」彼は着替えをしながら云った、「おれは止めやあしないぞ」
「そういうことはよく考えてから云うもんだ、迂濶に立派な口をきくとあとで引込みがつかなくなるよ」
得石は妻を見た。
「なんだと」彼の眼はすっと細くなった。
「なんでもないさ、いまはね」おくにはゆっくり云った、「おまえさんといっしょになって九年、薬研をすったり、客の応対から勝手仕事まで、代脈と下女の役をたった一人で、飽き飽きするほどやって来た、いつか夫婦らしい夫婦になれる、子供を産んで、海野得石の妻となって、恥ずかしくない世間づきあいができる、そう思って辛抱していたんだ、ところがこのごろになって、ようやくおまえさんの本心がわかった、おまえさんにはあたしと夫婦になる気なんか、初めっからなかったんだ」