Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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のぶこ

伸子

宮本 百合子

Lee 伸子 (のぶこ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 232.543 caracteres · 466 pantallas

Aozora Bunko

伸子は性来、旅行ずきであった。結婚する前は、おとよさんと、範囲は狭いが、よく出かけた。温泉も一つ二つは知っていた。佃と生活するようになってからは、彼の職業の関係と気質から、三日四日の小旅行もしなかった。夏、佃の生家へ行ったぎりであった。そんなのは、大勢の家族のうちにはいり、違った周囲で、東京にいると同じ生活の反復にすぎなかった。

本当に温泉へ行くと云うなら、それは伸子にとって、初めての旅行らしい旅行なのであった。宿屋に二人ぎりで暮すこと、それも彼女の空想を輝かせた。父の云いぐさではないが、山々や、温泉の空気や、晴れやかな朝の目覚めが活溌にする細胞の作用で、二人の苦情が、ちょっと喧嘩すれば綺麗に忘られるような奇蹟でも起ったら、何と素晴らしいことだろう。どんなに仕合せなことであろう! 佃も同じ考えなのだろうと、伸子は駭きと悦びとをもって推定した。彼女は心を打ち開いた調子で、アイスクリームをたべている夫に云った。

「――本当なの? そのお話」

「行きますか?」

「ええ、行ってよ!」

「じゃあ、早速電報で問い合せて見ましょう」

佃は、事務的な口調でききかえした。