Clásicos japoneses con furigana
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やぎゅうつきかげしょう
柳生月影抄 名作短編集(二)
吉川 英治
Lee 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 173.309 caracteres · 352 pantallas
「――この顔で」
「女の後を、だと」
「う、ふふふ」
と、前のどよめきが消えないうちに、腹をかかえてまた笑った。
けれどその笑いも、井戸へ石を落した水音のように、やがて、はたと沈んじまい、前にも増して、陰気に返ってしまうのだった。
猿もそうだった。
牢の隅に、ちょこなんと胡坐を組んで坐ったまま、毎日毎日、それからは余り口をきかない。
わしを始め、この中には、強盗強姦、追剥ぎ火放け、ありとあらゆる罪を犯した兇悪な人間もいるが、その中へ間違って紛れ込んで来た猿は、まだ掻ッ払い一つろくに知らない初心な奴だった。
だから定めし、まだ馴れない牢獄が怖ろしいのだろう。――そう察して、ある時わしが、
「猿、猿。てめえはきっと、すぐ御放免になるだろうぜ。だから余り心配するな」
慰めてやると、猿はふり向いて、にやりと、
「はい。そうべつに、心配はしておりません」
と、いう。
「じゃあなぜ、身動きもせず、毎日眼をふさいだきり、黙っているんだ」
「でも、眼をあいていても、この牢獄では何も見えませんもの。――反対に、じっと眼をふさいで、心を澄ましていれば、身はここに置いても、世間の何でも見えて来ます」