Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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やぎゅうつきかげしょう

柳生月影抄 名作短編集(二)

吉川 英治

Lee 柳生月影抄 名作短編集(二) (やぎゅうつきかげしょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 173.309 caracteres · 352 pantallas

Aozora Bunko

二

「ああ、厭な空だ……。怖ろしい雲の形相だ。明日のこの世はどうなる事やら?」

思わず、空を仰いで、わしは嘆息した。あしたの天変地異を今夜の今知っている者は、あの出陣列に従って行った御家来衆も数多ながら、わしひとりしかなかったのである。

――怖ろしくて、胸が動悸して、わしは、どうしても、寝つかれなかった。

二

なぜお止めしなかったか。死を賭してまでも、なぜ諫言しなかったか。

臆病者、不忠者。

わしは、わしを責めて、怖ろしさと苦しみと、二重の悩みに、輾転と悶えた。

寝床についてから、わずか半刻ばかりが、十年の苦悶にも思われて長かった。

「そうだ。今からでも」

わしは、がばと、寝具を蹴って、厩から馬を曳き出した。

城門の番士には、

「殿様が御持薬の咳薬を、お忘れになったから、追いかけて、お渡ししてくる」

と、作り事をいい、駒に鞭をあてて、出陣の列を追って行った。

その晩のわしは、まったく捨身だった。田も畑も街道も見えなかった。ただ真っ暗な五月闇の雲の断れ目に、ぴかぴかと大きく光る星だけが、何かの凶兆のように眼に映った。

桂川の流れを越えると、京はもう間近にそこらの山上から指さされる。