Clásicos japoneses con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lee 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 57.666 caracteres · 114 pantallas
お雪は座布団を取って窓の敷居に載せ、その上に腰をかけて、暫く空の方を見ていたが、「ねえ、あなた」と突然わたくしの手を握り、「わたし、借金を返しちまったら。あなた、おかみさんにしてくれない。」
「おれ見たようなもの。仕様がないじゃないか。」
「ハスになる資格がないって云うの。」
「食べさせることができなかったら資格がないね。」
お雪は何とも言わず、路地のはずれに聞え出したヴィヨロンの唄につれて、鼻唄をうたいかけたので、わたくしは見るともなく顔を見ようとすると、お雪はそれを避けるように急に立上り、片手を伸して柱につかまり、乗り出すように半身を外へ突出した。
「もう十年わかけれア……。」わたくしは茶ぶ台の前に坐って巻煙草に火をつけた。
「あなた。一体いくつなの。」
此方へ振向いたお雪の顔を見上ると、いつものように片靨を寄せているので、わたくしは何とも知れず安心したような心持になって、
「もうじき六十さ。」
「お父さん。六十なの。まだ御丈夫。」
お雪はしげしげとわたくしの顔を見て、「あなた。まだ四十にゃならないね。三十七か八かしら。」
「おれはお妾さんに出来た子だから、ほんとの年はわからない。