Clásicos japoneses con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lee 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 57.666 caracteres · 114 pantallas
二
もういいからしまいたまえ。」
「別に入用なものでもありませんから……。」呟きながらわたくしは紙入をしまい風呂敷包をもとのように結んだ。
「もう用はありませんか。」
「ない。」
「御苦労さまでしたな。」わたくしは巻煙草も金口のウエストミンスターにマッチの火をつけ、薫だけでもかいで置けと云わぬばかり、烟を交番の中へ吹き散して足の向くまま言問橋の方へ歩いて行った。後で考えると、戸籍抄本と印鑑証明書とがなかったなら、大方その夜は豚箱へ入れられたに相違ない。一体古着は気味のわるいものだ。古着の長襦袢が祟りそこねたのである。
二
「失踪」と題する小説の腹案ができた。書き上げることができたなら、この小説はわれながら、さほど拙劣なものでもあるまいと、幾分か自信を持っているのである。
小説中の重要な人物を、種田順平という。年五十余歳、私立中学校の英語の教師である。
種田は初婚の恋女房に先立たれてから三四年にして、継妻光子を迎えた。
光子は知名の政治家某の家に雇われ、夫人付の小間使となったが、主人に欺かれて身重になった。主家では其執事遠藤某をして後の始末をつけさせた。其条件は光子が無事に産をしたなら二十個年子供の養育費として毎月五拾円を送る。