Clásicos japoneses con furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lee 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 188.242 caracteres · 380 pantallas
パチパチと火の粉が四散した。その一つが飛んで行って、女のはだけた懐中へはいった。
女の胸には乳房がなかった。乳房のあるべき位置の辺りに、椀ほどの穴が穿いていた。剥げた朱塗りの椀のように、諸所に赤い斑点があった。
焚火の勢いが弱くなった。片腕の男がその腕を延ばし、側に積んであった屋根板を、苦心して掴んで火へくべた。
パッと焔が高く上がった。ひとしきり皆んなが輝いた。
女の膝に子供がいた。母の胸へ後脳をあて、眼を閉じて眠りに入りかけていた。五歳ばかりの子供であった。濃い睫毛が隈をつくり、下瞼へ墨でも塗ったようであった。左の頬に腫物があった。腫物の頭は膿を持っていた。火に照らされて果物のように見えた。
母親が子守唄をうたい出した。小さい声ではあったけれど四辺がひっそりと静かなので、遠くまで響いて行くようであった。昔は美人であったろう、いや今でも彼女の顔は、片耳欠け落ちているばかりで、その美しさを保っていた。特にその眼が美しかった。信仰を持った人の眼であった。奇蹟を待つ人の眼であった。
彼女は子守唄をうたいながら闇の空を眺めていた。
おいでなさりませ神様よ