Clásicos japoneses con furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lee 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 188.242 caracteres · 380 pantallas
五
松虫は主水の先に立って雑木林へ分け入った。
ちょうど砂金でも振り蒔いたような夕陽の光が木々の隙から斜に林へ射し込んでいたが、歩いて行く二人の肩や背へ虎斑のような影を付けた。頭の上の木の枝では栗鼠が啼きながら遊んでいる。と、行手の草叢から真っ白いものが飛び出した。他ならぬ野性の兎である。その時忽然遥か行手から読経の声が聞こえて来た。数十人の男女の者が声を合わせて誦しているらしい。
「おお」と思わず主水は云った。そうしてそのまま立ち止まった。
富士の裾野の林の奥から読経の合唱が聞こえるのである! これは驚くのが当然であろう。
しかしその声はやがて止んだ。後はしんと静かである。
「恐れることはございませぬ。不幸な人達なのでございます。……妾の父はその人達の唯一の友なのでございます。……さあ参ろうではございませぬか」
五
で、二人は歩き出した。間もなく林の底へ来た。四方は灌木や茨の壁で隙間もなく囲まれている。
「……向こうへ行くことは出来ませぬ。ここが境いでございます。……間もなく父も参りましょう。ここでお待ちくださいまし」
云いながら松虫は草を敷いてそのままそこへ坐り込んだ。