Lectura en japonés

Clásicos japoneses con furigana

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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Lee 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.

N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 130.271 caracteres · 263 pantallas

Aozora Bunko

彼女は何うしても彼の市郎を思い切れぬのである。

「お前さんは可哀想な人だねえ。」と、お葉は我身につまされて嘆息した。

「可哀想なら、嫁になって呉れないか。」

重太郎は飽までも無邪気であった。可愛いと可哀想とは其間に少しく距離のあることを、彼は未だ理解し得なかった。お葉は重太郎を可哀想だとは思ったが、其同情が変じて恋とはならなかった。

「どうしても忌か。俺が斯んなに云っても肯いて呉れないのか。」と、重太郎は泣かぬばかりに口説いた。

「堪忍してお呉んなさいよ。」と、お葉は泣いて答えた。

「だから、何故だと云うのに……。」

以前のお葉ならば、「お前が忌だからさ」と、木て鼻を括ったように情なく断ったかも知れぬ。が、今は然うでない。彼女は優しく重太郎の手を把った。

「ねえ、お前さん。妾は決してお前を嫌う訳じゃアない。それほどに妾を思って呉れるのは、真実に嬉しいと思っている。だが、困ることには、妾にも思っている人があるんだから……。どうしてもお前のお嫁になることは能ないんだから、何うぞ諦めてお呉んなさい。ね、判ったかい。決してお前さんを嫌うんじゃないよ。世間に女は妾一人じゃアない。