Clásicos japoneses con furigana
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のぶこ
伸子
宮本 百合子
Lee 伸子 (のぶこ) de 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 232.543 caracteres · 466 pantallas
彼は伸子を見ると、組んでいた片脚を下して、ついさっき別れて帰った人のように、
「ただ今」
と云った。
「足はどう」
頸の辺がめっきり日に焼けた彼は、顔に、あらたまった、探るような表情を浮べた。伸子も、同じ真面目な様子で、黙って夫に片手をさし出した。
「暑かったでしょう? あっちは」
「ああ、大阪はずいぶん暑かった。宿屋はよかったけれど」
伸子は彼の横に並んで腰かけた。佃は、頭を反らせるようにし、しげしげ伸子を見守りながら、低い調子で訊いた。
「どうです?」
彼女の心はどんな工合かと云う意味なのを、伸子は直ぐ飲みこんだ。伸子は、いちどきにこみ上げてくる情愛と、激しく彼を反撥するものとを感じた。伸子は当惑し、首を曲げて、どちらにでもとれるように唇をまげた。
「――今夜一緒に帰りましょう」
伸子がはかばかしく返事をしないので、佃は彼女を抱え込むようにして顔を近づけながら、繰り返した。
「ね、帰るでしょう?」
即答ができないので、伸子は、つけ元気で彼の手を執って、引き立てた。
「――とにかく、まあお風呂でも浴びていらっしゃいな――さっぱりなさらないでしょう?」
浴衣を出して、佃を風呂場へやった。