Clásicos japoneses con furigana
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「しなゆうき」
支那游記
Lee 支那游記 (「しなゆうき」) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 51.859 caracteres · 105 pantallas
其処へ瓦を張った部屋には、敷物もなければ、ストオヴもない。坐るのは勿論蒲団のない、角張った紫檀の肘掛椅子である。おまけに私の着ていたのは、薄いセルの間着だった。私は今でもあの書斎に、坐っていた事を考えると、幸にも風を引かなかったのは、全然奇蹟としか思われない。
しかし章太炎先生は、鼠色の大掛児に、厚い毛皮の裏のついた、黒い馬掛児を一着している。だから無論寒くはない。その上氏の坐っているのは、毛皮を掛けた籐椅子である。私は氏の雄弁に、煙草を吸う事も忘れながら、しかも氏が暖そうに、悠然と足を伸ばしているのには、大いに健羨に堪えなかった。
風説によれば章炳麟氏は、自ら王者の師を以て任じていると云う事である。そうして一時はその御弟子に、黎元洪を選んだと云う事である。そう云えば机の横手の壁には、あの鰐の剥製の下に、「東南撲学、章太炎先生、元洪」と書いた、横巻の軸が懸っている。しかし遠慮のない所を云うと、氏の顔は決して立派じゃない。皮膚の色は殆黄色である。口髭や顋髯は気の毒な程薄い。突兀と聳えた額なども、瘤ではないかと思う位である。が、その糸のように細い眼だけは、――上品な縁無しの眼鏡の後に、何時も冷然と微笑した眼だけは、確に出来合いの代物じゃない。