Clásicos japoneses con furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lee 湖畔亭事件 (こはんていじけん) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 69.335 caracteres · 137 pantallas
一向食慾などありませんでしたが、兎も角私はお膳につきました。そして、箸を取りながら、ふと、もう一度昨夜のことを確めて見る気になったのです。朝のはれやかな空気が、私の口をいくらか快活にしました。
「君は知らなかったかい。昨夜湯殿の方で、変な叫声がした様に思ったが、何かあったのじゃないかい」
私はさも剽軽な調子で、こんな風に初めました。そして様々に問い試みたのですが、女中は何事も知らないのです。客の内には無論怪我人などなく、附近の村人にも、そんな噂を聞かないというのです。あの手負いが、今まで人に気づかれぬはずはありませんから、その噂が耳ざとい女中達に伝っていないとすると、昨夜の事は、いよいよ一場の悪夢に過ぎなかったのかも知れません。私は更に自分自身の神経を心配しなければなりませんでした。
それから暫くして今更寝る訳にも行かず、部屋に坐ったままうつうつと物思いに耽っていた私の前に、一人の訪問者が現れました。それは先程一寸記した、面識の青年で、やはり同じ宿に泊っている河野という男でしたが、これがこの物語の主人公ともいうべき人物なのですから、ここに少しく彼のことを説明して置かねばなりません。