Clásicos japoneses con furigana
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こはんていじけん
湖畔亭事件
江戸川 乱歩
Lee 湖畔亭事件 (こはんていじけん) de 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 69.335 caracteres · 137 pantallas
二十
最早や尋ねて見ることもなくなったのですけれど、私は何となくその場を去り難い気持で、三造の姿をジロジロと眺めていました。不思議なことには、相手の三造の方でも、何かモジモジしながら、そこに突立っているのです。
彼は、襟に「湖畔亭」と染抜いた、古ぼけた半纒を着て、膝の所のダブダブになったメリヤスの股引をはいているのですが、そのみすぼらしい風体に似げなく、顔を綺麗に剃っているのが、妙に私の注意をひきました。この男でも髭を剃ることがあるのだな。私はふとそんなことを考えていました。彼は愚者にも拘らず、そうしておめかしをすれば、のっぺりとした好い男でした。狭い富士額が、一寸気にはなりましたけれど。
二十
どういう訳か、それから私は、彼の手首に目をやりました。しかし、そこには別に傷痕などはありません。私は事件以来、妙に人の手首に注意する様になっていたのです。その癖が出たのでしょう。無論この愚ものの三造を疑う気持があった訳ではありません。
ところが、そうして相手を眺めている内に、私はふとこんなことを考えました。
「昨日からたびたび聞かれても、この男は何も知らないといっているけれど、それは尋ね方が悪いのではなかろうか、尋ねる人は誰も時間をいわない。