Clásicos japoneses con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lee 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 57.666 caracteres · 114 pantallas
」
「お前一人か。」
「ええ。昨夜まで、もう一人居たのよ。住替に行ったのよ。」
「お前さんが御主人かい。」
「いいえ。御主人は別の家よ。玉の井館ッて云う寄席があるでしょう。その裏に住宅があるのよ。毎晩十二時になると帳面を見にくるわ。」
「じゃアのん気だね。」わたくしはすすめられるがまま長火鉢の側に坐り、立膝して茶を入れる女の様子を見やった。
年は二十四五にはなっているであろう。なかなかいい容貌である。鼻筋の通った円顔は白粉焼がしているが、結立の島田の生際もまだ抜上ってはいない。黒目勝の眼の中も曇っていず唇や歯ぐきの血色を見ても、其健康はまださして破壊されても居ないように思われた。
「この辺は井戸か水道か。」とわたくしは茶を飲む前に何気なく尋ねた。井戸の水だと答えたら、茶は飲む振りをして置く用意である。
わたくしは花柳病よりも寧チブスのような伝染病を恐れている。肉体的よりも夙くから精神的廢人になったわたくしの身には、花柳病の如き病勢の緩慢なものは、老後の今日、さして気にはならない。
「顔でも洗うの。水道なら其処にあるわ。」と女の調子は極めて気軽である。
「うむ。後でいい。