Clásicos japoneses con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lee 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 57.666 caracteres · 114 pantallas
わたくしは突と立って主人と入れちがいに外へ出た。
伏見稲荷の前まで来ると、風は路地の奥とはちがって、表通から真向に突き入りいきなりわたくしの髪を吹乱した。わたくしは此処へ来る時の外はいつも帽子をかぶり馴れているので、風に吹きつけられたと思うと同時に、片手を挙げて見て始て帽子のないのに心づき、覚えず苦笑を浮べた。奉納の幟は竿も折れるばかり、路地口に屋台を据えたおでん屋の納簾と共にちぎれて飛びそうに閃き翻っている。溝の角の無花果と葡萄の葉は、廃屋のかげになった闇の中にがさがさと、既に枯れたような響を立てている。表通りへ出ると、俄に広く打仰がれる空には銀河の影のみならず、星という星の光のいかにも森然として冴渡っているのが、言知れぬさびしさを思わせる折も折、人家のうしろを走り過る電車の音と警笛の響とが烈風にかすれて、更にこの寂しさを深くさせる。わたくしは帰りの道筋を、白髯橋の方に取る時には、いつも隅田町郵便局の在るあたりか、又は向島劇場という活動小屋のあたりから勝手に横道に入り、陋巷の間を迂曲する小道を辿り辿って、結局白髯明神の裏手へ出るのである。八月の末から九月の初めにかけては、時々夜になって驟雨の霽れた後、澄みわたった空には明月が出て、道も明く、むかしの景色も思出されるので、知らず知らず言問の岡あたりまで歩い