Clásicos japoneses con furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lee 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 57.666 caracteres · 114 pantallas
」
「名は何と云う。」
「大江匡。」と答えた時、巡査は手帳を出したので、「匡は匚に王の字をかきます。一タビ天下ヲ匡スと論語にある字です。」
巡査はだまれと言わぬばかり、わたくしの顔を睨み、手を伸していきなりわたくしの外套の釦をはずし、裏を返して見て、
「記号はついていないな。」つづいて上着の裏を見ようとする。
「記章とはどう云う記章です。」とわたくしは風呂敷包を下に置いて、上着と胴着の胸を一度にひろげて見せた。
「住所は。」
「麻布区御箪笥町一丁目六番地。」
「職業は。」
「何にもしていません。」
「無職業か。年はいくつだ。」
「己の卯です。」
「いくつだよ。」
「明治十二年己の卯の年。」それきり黙っていようかと思ったが、後がこわいので、「五十八。」
「いやに若いな。」
「へへへへ。」
「名前は何と云ったね。」
「今言いましたよ。大江匡。」
「家族はいくたりだ。」
「三人。」と答えた。実は独身であるが、今日までの経験で、事実を云うと、いよいよ怪しまれる傾があるので、三人と答えたのである。
「三人と云うのは奥さんと誰だ。」巡査の方がいい様に解釈してくれる。
「嚊アとばばア。」
「奥さんはいくつだ。