Clásicos japoneses con furigana
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がらすどのうち
硝子戸の中
Lee 硝子戸の中 (がらすどのうち) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonés con furigana. JLPT N2. Toca una palabra para ver el significado.
N2 · avanzado · kanji y kana modernos · 52.702 caracteres · 105 pantallas
九
私は彼女に向って、すべてを癒す「時」の流れに従って下れと云った。彼女はもしそうしたらこの大切な記憶がしだいに剥げて行くだろうと嘆いた。
公平な「時」は大事な宝物を彼女の手から奪う代りに、その傷口もしだいに療治してくれるのである。烈しい生の歓喜を夢のように暈してしまうと同時に、今の歓喜に伴なう生々しい苦痛も取り除ける手段を怠たらないのである。
私は深い恋愛に根ざしている熱烈な記憶を取り上げても、彼女の創口から滴る血潮を「時」に拭わしめようとした。いくら平凡でも生きて行く方が死ぬよりも私から見た彼女には適当だったからである。
かくして常に生よりも死を尊いと信じている私の希望と助言は、ついにこの不愉快に充ちた生というものを超越する事ができなかった。しかも私にはそれが実行上における自分を、凡庸な自然主義者として証拠立てたように見えてならなかった。私は今でも半信半疑の眼でじっと自分の心を眺めている。
九
私が高等学校にいた頃、比較的親しく交際った友達の中にOという人がいた。その時分からあまり多くの朋友を持たなかった私には、自然Oと往来を繁くするような傾向があった。